京都のれんの刺繍ふろしきは美しいものです。
ふろしきといえば何かを包むための布と認識されがちですが、
カバンのようにモノを持ち運ぶだけでなく、モノを見えないように
隠すという役割もあります。
なかでも刺繍がほどこされた京都のれんのふろしきは美しく、
凸凹の表現ができるのが特徴です。
被服にしても凹凸があるだけで上品に見えるから不思議なものです。
立体的に仕上げることができるため、高級感を醸し出すことができます。
しかし制作するのは決して容易ではなく、高度な職人の技術が必要になります。
例えばミシンを使用する場合、職人が丁寧に柄を仕上げていくのです。
複雑な模様になると対応が難しく、並の職人では制作できません。

綺麗に仕上げるためには色選びとカラーバランスがポイントになります。
制作料金は一般的なふろしきより高くなりますが、一度購入すれば長く使えます。
乱暴な扱いをしない以上、糸がほぐれてくる心配もありません。
格式あるそのデザインは、官公庁からも愛用されています。
カバンに入れるよりも立派に見えますし、また大きなサイズにも
対応できるのが特徴です。それゆえ大切な書類を保護する意味でも
用いられることがあります。
検事が愛用するあるアイテムとは
意外なことにふろしきは検事への官給品として用いられてきた歴史があります。
なかには刺繍入りを使用している検事もおりますが、
これは決して法律で使用が定められているわけではありません。
ただ事件に関する証拠や資料などを裁判所に持って行くとき、
カバンだと何かと不都合が生じることがあるのです。
まずカバンには大きいモノを入れることが難しく、
特にスペースに余裕のないカバンですと、中の物が乾燥して
傷ついてしまう可能性があります。
ふろしきはさまざまなサイズや形状に対応でき、
また破損しにくいメリットがあるのです。

特に証拠書類に関しては破れると非常に困るので、
検事への官給品として支給されているのです。
使用する義務はありませんが、その使い勝手のよさから
多くの検事が愛用しています。供述調書等などは
折れ曲がってしまうだけで、裁判所に対する心証が
悪くなってしまいます。
公的な書類である以上、折れ目どころか傷ひとつつけてはいけないのです。
凶器や薬物などを保護するためにもふろしきは最適であるため、
現在でも幅広く使われています。
その利用率には明確なデータがあるわけではありませんが、
99%程度とも言われています。それほど検事にとっては
馴染み深いアイテムというわけです。